好きな漫画、そして、これから好きになる漫画について

好きな漫画、と言われると真っ先に思いつくのが木村紺の『神戸在住』だ。
この作品は月刊アフタヌーンで8年ほどにわたって連載された。


出会いはアフタヌーンを初めて購入したとき、2005年の7月号だった。
冬目景の『ハツカネズミの時間』がモーニングから移籍し、
ほぼ同日に発売された1巻の続きを読むことが出来たため、電車に乗る前に手にとった。
そもそもアフタヌーンには当時単行本で連載を追っていた作品が多数あり、
なおかつ『寄生獣』をはじめとする歴代の傑作が掲載された雑誌ということで気になっていた。


コミック雑誌を講読し始めるというのは、ゲームのハードを購入するのに似ている気がする。
雑誌単体ではほぼなにもわからない。
まず、すでに読んでいる作品、気になっている作品があって、
そこになんらかの後押しがあって購読開始に至る。
その後押しがたまたま『ハツカネズミの時間』だったのだ。


そして電車の中で読もうとするのだが、やはり初めて買った雑誌だけあって、読みどころがよくわからない。
そのままあてどもなくパラパラとページをめくっているうちに目に付いたのが『神戸在住』だった。
ベタやトーンをほぼ廃し、コマとコマの間にモノローグを配した、特徴的な画面。
描かれるのは神戸に住む女子大生のなんということのない日常。
当時少年漫画から青年漫画等への過渡期にあった自分にとって衝撃的だった。


すぐに単行本を買い集め、その日常の後ろに隠された痛みに、また衝撃を受けた。
とはいえ自分が主に評価するのは日常の活写力で、
この作品ではキャラクターごとに出身地が細かく設定され、それによって関西弁の使い方が違うのだ。
これに関しては読んで感じてもらうしかないと思う。


残念ながら僕の出会いから1年と経たずに連載は終わってしまった。
そして作者の作風の転換というメタ要素をもギャグに巻き込んだ『巨娘』を挟んで連載された女子柔道漫画『からん』の突然の打ち切りによる連載終了で、
僕は先日アフタヌーンの購読の終了を決意した。
購読中に作品を掲載した注目すべき漫画家としては、豊田徹也市川春子などがいたが、
彼らにはアフタヌーン本誌を購読しなくても出会っていただろう。
しかし木村紺に関しては特に話題に上がるような派手な漫画を描いているわけではなく、
アフタヌーンを買わずには出会えなかったかもしれない。


そして今、新たにヤングキングアワーズの購読を検討している。
石黒正数谷川史子大石まさる、と好きな漫画家が複数連載をしている雑誌だ。
惑星のさみだれ』の連載を終えた水上悟志が次号短編で復帰するらしい。
これもきっかけではないか。
また、雑誌を買わなければ生まれない出会いがあるのではないかと期待している。