漫画家10選

さて、突然だが好きな漫画家を10人挙げておすすめしていこうと思う。(順番に意味はない)


木村紺
月刊アフタヌーンで主に活躍する漫画家。
代表作に『神戸在住
第3作『からん』が全7巻と志半ばで打ち切られて打ち切られてしまったのが大変残念。
それをきっかけとして私はアフタヌーンの購読をやめた。
これまでの3作全て、作風は違うのだが、同じところもあり、
どれも確かに木村紺の漫画となっている。
通底するのはやはり「人間」に対する視線であろう。
ファンタジーでありながらもリアリティを持つ各キャラクターへの尋常ではない設定の細かさが見える。


谷川史子
りぼんなど、集英社系の少女漫画雑誌で主に活躍している。
短編が主なので、特別代表作といえるものはないが、
連作のスタイルのものを得意とするため、近作の『他人暮らし』『清々と』あたりを導入にすれば良いだろう。
基本的にはすごくスタンダードな少女漫画を描く。
特別どこがすごいの?と聞かれても正直答えようがない。
とにかく読んでいて幸せな気分になれるのだ。


こうの史代
漫画アクションなど、双葉社の雑誌を主な発表の場としている。
代表作は『夕凪の街 桜の国』『この世界の片隅で』などの戦争を取り扱った漫画。
しかし、その他の作品は主に日常的な風景をコメディタッチに描いたものが多く、
代表作群においても、同様に描かれる一般市民の生活にこそ、旨みがあると思っている。
個人的ベストは妻を亡くした壮年の男の、息子一家との生活を描く『さんさん録


石黒正数
雑多な出版社で作品を発表する。
代表作は『それでも町は廻っている
苦手な人は苦手なんじゃないかな、と思う作家。
作品によってわりと方針が違うように思う。
説教臭いと思う人は少なくないだろうが『ネムルバカ』が大好き。
むしろ短編は大したことがないので『それ町』『ネムルバカ』の2作で私の中でこの位置を得ているとも言える。


岩明均
言わずと知れた有名作家。アフタヌーンで長編を発表する。
代表作は『寄生獣
短編以外に1作も失敗作がない、なんとも恐ろしい作家。
ストーリーテリングもさることながら、瞬間の切り取りの能力がすばらしく、
寄生獣』で発現したその能力は最新作『ヒストリエ』でも遺憾なく発揮されている。
歴史にモチーフを得た『寄生獣』以後の作品もぜひ追ってみて欲しい。
連載中の『ヒストリエ』では「雪の峠」と似たようなたくらみが見えるのではないかと思う。


冬目景
最も掲載率が高いのは都市伝説雑誌コミックバーズであり、
あまりに色々な雑誌で書き散らすことで有名な漫画家。
代表作は『羊のうた
しかし『羊のうた』や『ハツカネズミの時間』のようなシリアスだけではなく、
イエスタデイをうたって』『ACONY』のようなコメディも基本的な作風の一つ。
絵から感じられる雰囲気を楽しむ漫画家といえるかもしれない。


森薫
エンターブレインの漫画雑誌で作品を発表する。
代表作は『エマ』
とにかく自分の好きなものを描くのが信条なのだろう。
楽しんで絵を描き込みまくっているのが伝わってくる。
表情の力がすばらしいと思う。
個人的にはサイレントに挑戦して欲しいとずっと思っている。
演出で魅せる作家だと思っていたのだが『エマ』の番外編(8〜10巻)の短編群で単純なストーリー作りにも感心させられた。
隙のない作家だと思う。


志村貴子
主にコミックビームで執筆する。
代表作は『放浪息子
思春期の子供たちのジェンダーに関する作品が主なもの。
特徴であり、圧倒的なのがネームの構成。
最後に1ページ丸々使って書かれる一言がそこまでに描かれた登場人物の心情を抉り出す様は見事。
青い花』の1話ラストから2話冒頭の流れは鼻血吹くかと思うほど悶絶した。


道満晴明
少し前まで快楽天が主な掲載誌であったが現在は一般誌に掲載されることも増えている。
代表作は『性本能と水爆戦』シリーズ。
ほぼ全ての作品が16ページ以下の短編で、
メルヘンからスラップスティック、ナンセンスまでありとあらゆるものが出てくる。
圧倒的密度の作品集『続・性本能と水爆戦』は読んでいて眩暈がしてくるほどだ。
現在連載中の初の長編『ヴォイニッチホテル』もその縦横無尽な作風を大いに発揮してくれている。


水上悟志
主にヤングキングアワーズに執筆。
代表作は『惑星のさみだれ
少年漫画と青年漫画のいいとこ取りのような作風だろうか。
圧倒的に熱い、しかし少年漫画ほど甘くもない。
無駄に作品を引き伸ばさない潔さがあり、
短編群も出色のものが多い。


このような感じでいかがだろうか。
参考に読んだりしてもらえたらうれしいし、
どう思ったかを言ってもらえるとさらにうれしい。